1 ユード博士とボンゴリー博士



 一般的な園児ほどの大きさで生まれたての子猫のような可愛げをもった生命体がいわゆるマルスだが、詳しいことはまるでわかっていない。一般的な園児ほどの大きさで生まれたての子猫のような可愛げをもった宇宙人が地球人のペットになるためだけにわが星に降り立ったというユード・ダ・デルセルス博士の説はあまりに都合が良すぎてきわめて怪しい。どちらかと言えば、核実験だかなんだかで突然変異したクマムシではないかというボンゴリー・トップ・ジーマン博士の説の方が有力であると私は考えている。

 なぜかと言うと、マルスは眠りにつくとき、ミイラのように干からびるのだ。これはクマムシに見てとれるタン状態だと考えて差し支えないだろう。ミイラのように干からびたマルスの姿は圧倒的に気持ちが悪いので、誰もが布をかぶせて目に入らないようにしている。人間のエゴというやつだろう。もちろん私も布をかぶせている。

 ボンゴリー博士の実験によると、タン状態のマルスはいわゆる仮死状態にあるそうだ。ミイラのように干からびてはいるが、水分を吸収し自力で復活できるのである。俗っぽい言い方をすれば「クリプトビオシスぶっている」というやつだ。

 そして、クリプトビオシスぶっている最中のマルスは、マイナス253度から151度までの温度に耐え、人間の致死線量の1000倍のX線放射に耐え、真空から6000気圧までの圧力に耐える。ボンゴリー博士の報告はクマムシの特性とまったく一致する。マルスはクマムシそのものか、あるいはクマムシのDNAを有した宇宙人であると私は推測している。おや、なぜだろう、そうするとユード博士の言い分もあながち間違ってはいないのかもしれない。





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