14 大資本による労働者の選別は産業を衰退させうるか
しかし、彼女が引き当てたのは、ボンゴリーそば10人前だった。
「さっき叫んでた、コパローなんとかって、何」
彼女はキョトンと聞いた。キョトンなんて、変な擬音語だ。
あまりに長いため息の後、「研究に必要だから」と針金を回収してから帰ろうとしたユード・ダ・デルセルス博士を無理やり引き止めて、私たちはボンゴリーそばを美味しくいただいた。博士にはひげはそった方が良いとも伝えた。
「ひどく こばらが すいた だけで ござる」
新しく覚えた言葉で、マルスは極めて明快に午前中の奇行について説明してくれた。
「あ、それでね。あたし、再来週の連休、友だちと昇仙峡に行くことにしたから。でね。そのときマルス連れて行きたいんだけど平気かな。友だちもマルスと一緒に住んでるらしくてさ。目覚めたマルス見てみたいって言うから」
秋は深まっていく。
季節の変わり目には少し遅いが、マルスは抜け毛がひどくなった。
コパロール・テンダムでは、それを利用したマルス毛産業が誕生しつつあるらしい。
国際法が撤回され、いわゆる「マルス産業」に関しては推進派と人権派が拮抗している。「どちらかと言えば人権派」という限りなくニュートラルなスタンスを保っているボンゴリー・トップ・ジーマン博士が祖国のマルス産業をどう裁断するのか、見ものではある。
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