7 生物学的に見たマルス



「そこが問題なんだよ」

 私は彼女の疑問に賛同した。
 そう、この国際法には決定的に納得のいかない部分がいくつか存在する。

「まず、マルスをあまりに危険視し過ぎている点。人間を脅かすほど著しく成長したマルスはまだ報告されていない。せいぜい子どものあそび相手・話し相手が務まる程度だ」

「そもそもさー、この子たち良い子だよね」
 彼女がマルスの手(前足だろうか)を握りながら言う。

「そう。とても平和的な生き物だ。ただ数匹しか確認されてなく未知数であるならまだしも、これだけ世界中に広まってるし、もう1年も経つんだ。問題無しと判断する方が常識的だろう」

 次に、その危険視に伴い、マルスを「飼育すべきもの」として扱っている点。

「ペットじゃないのに、ペットと同じようなもんだよね」
 彼女の膝の上にちょこんと座るマルス。

「何が何でもマルスに知的生命として認めない、知性を与えないっていう方針だ。逆に目覚めさせて知性を与えた方がより平和的な共生を進められるはずなのに」

 そして、何より・・・

「【大宇宙の神秘たるマルスは】という表現」

 この国際法は、ユード・ダ・デルセルス博士が中心となって創られたと言われている。その象徴たりえるのがこの表現である。

「マルスを宇宙人だって決めつけてる。宇宙人だっていう前提で考えるから、突然の侵略を被る可能性を危惧することになる。ボンゴリー・トップ・ジーマン博士のクマムシ由来説をもっと深く検証すべきだ」

 だから、私は国際法に照らし合わせてではなく、マルスの生態的特徴を再認識するところから今後のことを考えていくべきだと主張しているのである。





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